
2026年8月6日、米国特許商標庁(USPTO)の審判再審理パネル(ARP)は、Ex parte Baurin事件において先例的判決(precedential decision)を下し、特許審判部(PTAB)の以前の合議体決定を覆して、審査官による自明型ダブルパテント(OTDP)拒絶を復活させました。同パネルは、拘束力を有する連邦巡回区控訴裁判所(CAFC)の判例に基づき、出願継続中の権利化手続におけるOTDP拒絶は、権利化を目指す請求項に特許期間の不当な延長リスクがない場合であっても、ハラスメント防止という根拠のみで成立し得ると判示しました。この判決は、CAFCによるAllergan v. MSN判決の実務上の適用範囲を狭めるものであり、米国の継続出願における厳格な要件を維持させるものとなります。
Ex parte Baurin事件(Appeal 2024-002920)において、John A. Squires USPTO長官、Kalyan Deshpande PTAB首席行政特許法官、およびMichelle Ankenbrand 首席代理補で構成されるARPは、職権による再審理(sua sponte rehearing)にて先例的判決を下しました。この決定は、抗体様結合タンパク質に関する米国特許出願第17/135,529号に対する審査官のOTDP拒絶を取り消していた2024年11月8日付のPTAB決定を覆したものです。審査官は、'529出願から生じ得るいかなる特許よりも後に出願され、かつ後に満了する米国特許第10,882,922号を引用し、'529出願の請求項を拒絶していました。ARPは、Allergan USA, Inc. v. MSN Laboratories Private Ltd.事件(Fed. Cir. 2024)で確立された限定的なOTDPの例外規定は適用されないと判断しました。その理由として、'529出願がそのファミリーにおいて「実際の最先出願(first actual filing)」ではないこと、最初に特許化されたものではなく依然として権利化手続中(pending)であること、および引用特許と共通の優先日を有していないことを挙げています。さらに、Fallaux、Hubbell、Cellectといった過去のCAFC判例に依拠し、ARPは、自明な変形例について権利者が分離するリスクおよびそれらの分離した権利者による潜在的なハラスメントのリスクは、特許期間の延長に関する懸念とは無関係に、権利化手続中のOTDP拒絶を独立して支持するとの結論に達しました。
PTABの当初の2024年11月の決定および2025年12月18日付けの再審理申立ての棄却においては、OTDPは主として特許の独占権が時間的に不当に延長されるのを防ぐために存在する、と論じられていました。'529出願は引用された'922引用特許よりも前に満了するため、当初のPTAB合議体はOTDPを適用できず、審査官が主張する権利者分離の懸念は重要ではないとして退けました。しかしARPは、CAFCの判例はOTDPについて2つの異なる正当化根拠を認めていることを明確にしました。すなわち、不当な期間延長の防止と、同一発明の自明な変形例を行使する複数の特許権者からのハラスメントの防止です。ARPは、独立したハラスメント防止根拠がイノベーションを阻害する可能性があるかについては疑問を呈したものの、既存の控訴審判例によりUSPTOは両方の根拠を適用する義務を負っていると結論付けました。
本判決は、米国特許出願人が、対象出願が引用特許よりも早く満了するという理由だけでは、Allergan判決に頼ってOTDP拒絶を覆すことはできないことを再確認するものです。権利化手続において、審査官は、ポートフォリオ内の後出願における開示に基づいてOTDP拒絶を発行する全権限を保持します。米国で出願を行う日本およびアジアの企業にとって、この判示はジョイントベンチャーや共同R&Dにおいて重大な構造的リスクをもたらします。先願の米国出願が、共同開発または共同譲渡された後願特許に基づいてOTDP拒絶を受けた場合、出願人はターミナル・ディスクレイマー(存続期間の一部放棄)を提出するか、係属中の請求項を減縮しなければなりません。ターミナル・ディスクレイマーの適用には権利者の共通性が要件となるため、関連する米国案件全体で一元的な所有権を維持できない場合、回避不能なOTDPの拒絶理由が生じることになります。判例法によってダブルパテントルールが形成されディスクレイマーにより解消される米国実務とは対照的に、日本特許庁(JPO)や韓国特許庁(KIPO)では特許法上の重複特許規定(日本特許法第39条等)を適用しており、また補正の厳格な制限(日本特許法第17条の2第3項等)が出願後の修正を制限しています。ポートフォリオを防衛するため、企業の知財チームはクロスライセンスや共同開発にかかる出願ファミリーを点検し、譲渡条項によってすべての米国継続出願および分割出願において一元的な権利名義が義務付けられているかを確認する必要があります。
ARPはCAFCに対し、特許期間の延長が存在しない場合にハラスメント防止根拠をOTDP拒絶の独立した理由として維持すべきか否かについて、明確化を公式に求めました。上級審においてこの法理が再検討されるまでは、出願人は、後に提出されたファミリー出願によって生じる継続出願に対するOTDP拒絶を予期しておく必要があります。CAFCの判断が出るまでの間、権利化実務の担当者は、ポートフォリオの出願チェーンを予防的に再点検し、すべての関連出願にわたって共通の所有権記録を維持し、単一の主体によって権利が保有されている場合には権利化の早期段階でターミナル・ディスクレイマーを提出できるよう準備を進めるべきです。