概要

2026年8月25日、特許審判審決委員会(PTAB)はEx parte Chowdhury(審判番号 2025-002261)における決定を案内判決(informative decision)に指定しました。本決定は、不適当なマーカッシュ群の指定を理由とする審査官の拒絶理由通知を覆したものです。PTABは、列挙された構成要素が明細書に記載された共通の機能的役割を果たす場合、厳格な化学構造上の類似性を共有している必要はないと判示しました。この判断は、バイオテクノロジーおよび診断分野の出願において、限定要求(restriction)や不適当なマーカッシュ拒絶に対する明確な防衛手段を特許出願人に提供するものです。

事案の概要

Ex parte Chowdhuryにおいて、PTABはヒト被験者における放射線誘発損傷の治療方法に関するクレーム60および関連クレームの最終拒絶決定を審理しました。本クレームは、治療的対策の投与前後に、指定された15種類の特定のmiRNA(miR-130a-3p、miR-150-5p、miR-142-5pなど)で構成されるマーカッシュ群から選択される1つ以上のマイクロRNA(miRNA)のレベルを測定することを求めていました。

特許審査官は、MPEPのガイドラインに基づき、記載されたリストが不適当なマーカッシュ群を構成しているとしてクレームを拒絶しました。審査官は、これらのmiRNAがヌクレオチドで構成されていること以上の十分な物理的・化学的構造の類似性を共有しておらず、認知された化学的分類に属さず、先行技術において代替可能性の予測がなされていないと主張しました。

PTABは拒絶決定を取り消しました。CCPA(関税・特許控訴裁判所)の判例であるIn re Harnisch判決およびIn re Jones判決、ならびに連邦巡回区控訴裁判所(CAFC)のMultilayer Stretch Cling Film Holdings, Inc. v. Berry Plastics Corp.判決を引用し、構成要素が発明の目的に対して代替的に使用可能である場合、マーカッシュ群は適正であると判示しました。組み合わせクレームおよび方法クレームにおいては、クレームされた関係性における機能に寄与する共通の性質を有することが単一性を確立し、適正な群を構成します。

背景

USPTOの実務では、記載された構成要素が認知された化学構造を共有していない、または当業者に認知された分類に属していない場合、審査官はMPEP § 2117に基づいてマーカッシュ群に異議を唱えることが頻繁にあります。この基準は単一分子の物質クレームに対して厳格に適用されますが、出願人は以前から、製造方法、方法、および組み合わせのクレームはより広範な機能的基準に基づいて運用されるべきだと主張してきました。

バイオマーカーパネルにおいて、個々の核酸またはタンパク質ターゲットは、多くの場合、全体的な配列や構造のホモロジー(相同性)を欠いています。それらの関連性は、放射線や疾患への曝露後の発現変化など、共有される生物学的挙動に完全に由来します。審査官による狭隘な構造上の要件は、出願人に対し、単一マーカーの「方法クレーム」のために何十件もの分割出願を行わせるリスクを孕んでいました。

影響と実務上の重要性

Ex parte Chowdhuryが案内判決に指定されたことで、弁理士や特許弁護士は、機能的クレーム、診断クレーム、およびバイオマーカーガイド下での治療クレームにおける不適当なマーカッシュ拒絶を克服するための説得力ある行政上の根拠を得ました。明細書に記載された共通の機能的関係がマーカッシュ群を支えることを明確にすることで、PTABは権利化前の権利化手続における不必要なクレーム分割のリスクを軽減しています。

企業知財部や出願担当者にとって、本決定は具体的な明細書作成実務を求めています。つまり、パネルの構成要素を結びつける共通の機能的メカニズムやシグネチャーを、当初明細書に明示的に定義することです。各バイオマーカーが特定状態の指標として機能することを明細書に明確に記載することが、構造的類似性の拒絶を克服するために必要な証拠の基礎となります。

米国出願を行う日本やアジアの出願人にとって、この基準はUSPTO前でマルチマーカー診断パネルをクレームする際の猶予となります。一方で、日本特許庁(JPO)に平行出願を行う場合、日本の実務では特許法第37条に基づいて発明の単一性が判断され、共通の技術的効果は共通の技術的特徴に基づかなければならない点に留意が必要です。JPOは異なるマーカッシュ構成要素が単一の発明思想を共有しているか厳格に審査する傾向がありますが、当初開示において明確な機能的同等性を確立しておくことは、両法域での権利化を円滑に進めるために有効です。

今後の展望

本決定は先例的判決(precedential)ではなく案内判決(informative)に指定されているため、すべてのPTAB合議体や審査官を厳格に拘束するものではありませんが、実務上の規範を示す公式な機関ガイドラインとして機能します。機能的リストに関して不適当なマーカッシュ拒絶を受けている手続中の出願については、拒絶理由通知への反論においてEx parte Chowdhuryを直接引用すべきです。

USPTOはクレームの群分けに関するガイドラインの改定を継続していますが、出願チームは二重のクレームセットを維持すべきです。すなわち、明細書中の明示的な機能定義に裏付けられた広範なマーカッシュ群と、権利化手続および権利化後のクリアランスレビューの双方で予備的地位を保護するための従属クレームまたはサブパネルの組み合わせです。

出典